【ゲーム】騎手の生き様を彩る「ひらがな」
本当に大事なことは、ひらがなでも充分に伝えることが出来る。
幸か不幸か、勝負に関わる情報が全て簡単な文字だったゲームに、幼い私は心を奪われた。
これまでの私の視力と時間とを奪い去っていったゲームの1つに、「ワールドダービー1993」というソフトがある。ハードはゲームギア。このハードは実に無骨な携帯ゲームであった。
競馬という未知なる世界に、まだ小学生も低学年だった私は、最初はおっかなびっくり触れ始め、そこから徐々に要領が分かるとのめりこんでいった。
小倉や中山がどこかも知らず、血統が何たるかも知らなかったが、そこには馬と人間とが織りなすドラマがあった。そして、おおざっぱながらも存在する戦法の違いや外見の差異などが私には新鮮で、一人一人の馬や騎手を自分なりに解釈して楽しんでいた。今思えば、「パワプロの登録名がどうだ」の、「オーストラリア代表のこの選手がどうだ」など、昨今の私の変態的こだわりはこの時期から芽を出していたのかもしれない。
さて、このゲームで冒頭の文章を色濃く表しているのは、ズバリ各騎手の説明である。
レース前には騎手を選択できるのだが、その騎手それぞれの説明文はほとんどがひらがなで、なかなかに味があって良い。
ということで今回は、その説明文を紹介すると共に、印象的なレースも適宜紹介しながら、好き勝手言いたいことを言おうと思う。
やすたか ランク・E (元ネタ・安田隆行)
ベテランのいじをみせる
トウカイテイオーを新馬から支えた功労者だが、このゲームでの彼の印象は「ダカラフラッシュ(元ネタ・ナガラフラッシュ)」の主戦騎手だということに尽きる。
3歳新馬のエース格であり、ゲーム上ではナルサ(ナリタ)ブライアンにも引けを取らない強さを見せつける。
しかし、ナガラフラッシュは安田騎手が主戦から離れてから1着を勝ち取ることはなく、95年を以て引退。
また安田騎手は、彼女が引退した95年から調教師として活躍し、名馬を何頭も輩出している。
そんな彼は、最後に文字通りベテランの意地を見せ、ナガラフラッシュの躍動に心血を注いだ。簡潔な一文に、彼の自負が存分に込められていると思うと感慨深い。
むらもち ランク・D (元ネタ・村本善之)
しごとはそつなく
「そつのない仕事」ができる人ほど、職場に必要とされる人間はいないと思う。
そこには派手さはない。けれども、気が付くとその人は職場の中核を担っているのだ。
そんな仕事師が村本騎手である。
ゲーム上では、主にイイノディクタス(元ネタ・イクノディクタス)の主戦騎手として活躍。
正直、ゲーム上ではそこまで怖い馬ではないのだが、気が付くと2着にいたりする。そしてハイライトは、実際の安田記念での2着だろう。
14番人気でスタートし、道中は後方待機。最後の直線はほぼ横一線ながらも、ゴール直前にスルッと前に出てハナ差で2着と相成ったのだ。
ヤマニンゼファー、シンコウラブリイ、ニシノフラワーなど重賞複勝馬たちがひしめく中での2位。単勝オッズが100倍を超えるという超伏兵が魅せた奇跡に、村本騎手の渋さが光った。
続く宝塚記念でも、最強牝馬・メジロマックイーンに次ぐ2着でゴールインし、名脇役としての面目躍如たる活躍を見せている。
それほど極端な追い込みを見せるわけでもないのだが、勝ち取るところはしっかりとモノにする村本騎手には、まさに「そつのない」という一言がピッタリである。
そんな味のある彼の騎乗と紹介コメントとに、酒が進むこと請け合いだ。
なかだち ランク・D (元ネタ・中館英二)
ダートでにがせばあなあり
このゲームでも希少な、ダートに強い騎手として彼は登場する。
とはいえ、ダートでの活躍よりも逃げの印象が強いのは、彼の騎乗するトリプルターボ(元ネタ・ツインターボ)に原因があるのは明らかだ。
というのも、このトリプルターボ、ゲーム中でも1,2位を争う逃げ馬として登場するのである。
ゲームで出てくるのは、七夕賞とオールカマーの2レース。このどちらも驚異的なスピードで大逃げを打って出る。
「あなあり」どころか、風穴を開ける勢いで1位を独走しゴールかっさらっていくのがお約束となっている。
さすがにゲーム上での演出なんだろうと思いきや、彼らは実際のレースでもとんでもない大逃げを見せファンには愛されていたのだ。
オールカマーのが好きなので、そちらを紹介しよう。
もう、とんでもないスピードである。単独首位とはまさにこのことで、逃げ専門であるはずのホワイトストーンすら、このスピードについていけていない。
ホワイトストーンがそれほど大崩れせず4着という点と、地味に2位をかっさらったのが、地方競馬の雄である「ハシルショウグン」という点も良い。天皇賞馬であるライスシャワーに土をつけた馬は数あれど、ここまで圧倒的なレース展開を見せつけたのは、ツインターボ・中館ペア以外にはいないだろう。歴史に残る一戦と言って良い。
実際に、中館騎手はダートでも「買える」騎手として活躍したようなのだが、ツインターボの逃げと言い、ヒシアマゾンの活躍と言い、その潜在能力の高さには目を見張るものがある。
「穴馬」を生み出す彼に、「穴」はなかったと言うべきか。
以上、今回はここまでで終着。
まだまだ上のランクの騎手がいるが、それはまた別のレースで。
自分自身、競馬はそんなに熱心には見ていないし、馬券を買ったこともないのだが、これ程までに個性豊かな騎手や馬たちが生きた時代に間接的にでも触れられて、本当に幸せである。
「コメントにひらがなだけじゃなくて、カタカナも混ざってんじゃねーか」という馬並みに視野の広い方からのヤジが飛んできそうだが、そこの部分は、どうかセイネヴァーで・・・・。
【生活】タイムスリップ ラン ザ ロード
よくよく考えてみれば、中学を卒業して以来まともに運動をしていなかった。
日々の生活のなかで、例えば駅の階段を積極的に上り下りするとかはしていたけれど、本格的に走ることなどはない。社会人になったことをきっかけに運動に手を出す人もいれば、私はどちらかというとインドアな趣味をより深く楽しむほうだった。
しかし、そんな私を外に連れ出したきっかけがある。ホカオネオネとエンジニアードガーメンツのコラボシューズの発売だ。
https://www.hokaoneone.jp/unisex-road/hupana-2-eg/1097110/BTBK/
「antenna」だったかでファッションブランドのコラボ特集を何とはなしに見ている時に目が留まり、一切触れたことのなかったランニングシューズの世界の扉を開けたのだった。買ってしまえば走るしかないということで、素敵な青と黒とのグラデーションのシューズを迎えた私は、まさに今日この日に初めてのランニングを敢行した。
シューズの感触はばっちり。道を蹴る足も軽やかで、さすがは「time to fly」の謳い文句といった弾力性。
一歩一歩踏み出すごとにしっかりと大地を踏みしめてくれる安定感が嬉しい。
足を運ぶごとに迫りくる喜びに、一歩また一歩と足を出していく。走るって楽しいなぁ・・・・。
5分後、めちゃめちゃ息があがる。喘息特有の、水あめが喉奥に張り付くかのような炎症が私を襲う。目的地まではずーっと坂道である。
私はさながらシルポート並みに逆噴射をしながら、坂道をズルズル登っていく。くしくも、周囲には幼いころに遊びまわった景色が走馬灯のように広がっている。死も近い。
私は走れば走るほどに苦しくなっていき、変わらない風景は依然として思い出を映し続ける。走れば走るほど、「今」が感じられるその瞬間に、私はなんとも理不尽な時間の流れを確かに見つけていた。
その時、その地域で一番ぜえぜえしていたであろう私は、スピードをウォーキング程度に緩めてなんとか生き永らえた。というより、半死状態なのでリアルウォーキングデッド状態ではあったが。
歩いてみると、春の陽気が柔らかく感じられ、上下のスポーツウェアの締め付けが心地よく筋肉を支えていることに気が付く。北方三国志で張飛が、「死地に入ってからが本番」的なことを言っていたのを思い出した。あれを読んだのはいつだったか。
その後、走ったり歩いたりを繰り返しつつ、目的の森林公園で一休み。
一瞬、悠久の時を超えた何かが口から出そうになるも、物理の力でねじ伏せて事なきを得た。
行きの1.8キロに対し、帰りはペース配分を少し緩くしての2.5キロで走行。SASUKEにて「息を吸え」というアドバイスが飛んでたのを思い出し、呼吸を意識しての帰宅となったが、これが意外に足が動いた。少しは錆びついた身体も順応したのかと思うと感慨深い。
そんなこんなで、ランニング生活1日目は終了。1日おきで少しずつ走れるかを試していこうと思う。
もう3月も本当に終わりを迎え、いよいよ4月に突入だ。
寝ている間に人は夢の中で走り、あるいは動き回って、時間だけが身体を朝へと連れ去っていく。
今日も寝ている間に、私は4月1日へとタイムスリップしていることだろう。そんなベッドルームでの思いを乗せてこの曲でお別れ。春へと、ページをめくろう。
【映画】声に出して読みたい「木曜洋画劇場」の予告
山本・・NHKはスポーツをでき事として捉える傾向が強いように思います。それに対して民放の場合は、ある意味で商品として捉えている。
というのは、「実況席のサッカー論」(山本浩・倉敷保雄、出版芸術社、2007)からの一節である。NHKの実況が心なしか落ち着いて聞こえるのは、このような要素が関わっているのかと思うと腑に落ちる。スポンサーに応えるか否かというのは、番組制作に大変な影響を与えているということだ。
そして、この違いは映画放送の予告にも表れていると思う。
例えば、NHKの場合はあらすじを簡単に紹介し、テロップなどで過剰な演出をして盛り上げることはないイメージがある。実際に、現在BSで放送中の「プレミアムシネマ」では、番組プロデューサーが落ち着いた語り口で映画の魅力を伝えてくれている。
対して、さながらアメリカのお菓子のように、コテコテの色付けで分かりやすく映画を盛り上げてくれるのが「木曜洋画劇場」だった。
良くも悪くも、「商品」としての映画を宣伝するために繰り出される愉快なワードの数々は、実演販売員が演出する売り込み文句を彷彿とさせる。
今回は、そんな木曜洋画劇場の予告編が織りなす「立て板に水アクション」を紹介して、言いたいことを言おうと思う。
レッド・ウォーター サメ地獄/ナレーション・大塚芳忠
早速、タイトルがズルい。斎藤孝先生も興奮を隠しきれない日本語っぷり。「血」という単語を使わずに阿鼻叫喚の情景を表現する辺り、映画製作者側も相当な手練れだ。
そんな映画が、テレ東のぶっ飛びセンスと合わさってしまい、今回映画予告という形で世に送り出された。
さらっと挿入された嘘字幕芸も見逃せないが、プロレタリア・シャーキング・パニックという新ジャンルが爆誕していることを感じさせない勢いの良さと、大塚芳忠さんが最後何者かに襲われるというオチが、1分という枠を超越したボリュームを生み出している。全くもって、最高という一言が似合う一作だ。
コマンドー/ナレーション・内海賢二
言わずと知れた、人気B級映画。もう5回以上見た。
のっけから、シュワちゃんの肉体を分かりやすく賛美した筋肉賛歌が楽しめる逸品。予告自体にスピード感はないが、内海賢二さんの重厚な声質とも相まって、ずっしりとした重量感を覚えずにはいられない。
最後には、「戦うパパは、かっこいい」という 取って付けた 親子愛の部分にも触れており、健全なる肉体と親子の深い情愛、コマンドーの秘める人間賛歌の可能性にまで気が付かせてくれる秀作になっている。
プレジデントマン/ナレーション・郷里大輔
開幕「待ってました」で視聴者を強制的に待ち人にする(良い意味で)凶悪なシステムを完成させた良作。
チャック・ノリスの「サマラァイ」「ブシドー」が聴ける貴重なCMであるが、それゆえに内容が謎に包まれるという、心憎い演出も魅力だ。
ただ内容はともかく、チャック・ノリスの強さは十二分に伝わってきて、これだけでチャック・ノリス・ファクト三杯はイケる出来上がりだ。
ノックオフ/ナレーション・玄田哲章
テレ東スタッフはジャン=クロード・ヴァン・ダムという名前がよっぽど好きなんだろうなぁ、ということがこれでもかというくらいに響いてくる。
「全身の毛穴で受け止めろ」という、急な無茶ぶりもご愛敬。終始ハイテンションで駆け抜けた玄田さんにも拍手を送りたくなる。
コブラ/ナレーション・立木文彦
「男の子リトマス試験紙」がやりたかっただけだろ!という意欲作。木曜洋画の予告常連の立木さんが、今回もそつなく読み上げる。
爆発、銃撃と、アクション映画の基本的な盛り上げの中にさらっとハイセンスな言葉の地雷を隠しこむ姿勢がたまらない。踏み抜いた時の快感たるや、予告製作スタッフの熱量が全身を駆け抜けるような得も言われぬ感覚である。
如何だっただろうか。以上で、声出し終わりである。
気が付いてみたら、もれなく豪華声優陣が声を当てており、制作陣に改めて感謝を申し上げる次第である。
無骨なうるさ型オタクたちも、これならば絶賛間違いなしであり、ガルパン、艦これ、木曜洋画の時代が来るのは間違いない。
とりあえず、自宅で予告を文字に書き起こしつつ、実際に声に出してみるのも悪くないかと思うこの頃。Cubaseが活躍する日も近い。
【漫画】あの時、私に「キングダム」を薦めてくれた人へ
今回の記事は、キングダムに対する批判等では決してなくて、どちらかというとキングダムを薦めてくれた人に対しての、私個人の知らんがな案件である。
読む際はどうか、黄河、あるいは長江のようにたおやかに受け止めて流してほしい。私の思いは氾濫しているが、それは決して反乱ではないのです。
中学に入る前くらいに、北方三国志を読みふけったことがきっかけで、私はわりと中国が舞台の時代物が好きである。
当時は、「三国志を読むことはカッコイイ」と本気で思っていた。ブラックコーヒーや戦闘アイテムくらい、三国志はその時の私にとって高貴であり、憧れだった。
厨二病が功を奏して三国志のほかに、楊家将、水滸伝、宮城谷昌光の太公望も読んだ。中島敦の作品も雰囲気が好きで、悟浄出世とか山月記なんかは何度か読み返した。
その全てが小説であり、漫画などを読むことがなかったのは少し珍しいかもしれない。ともかくも、かなりの人々の人生が交差し、戦いに明け暮れた戦士の生き様というものが少なからず私の胸の内に秘められている(と思う)。
そんな私に、漫画「キングダム」を薦めてくれる人が過去に2人くらいいた。
名前は知っていたのでどんな内容かと思って尋ねたら、どうやら主人公がのちの始皇帝であり、戦乱を生き延びていくらしい。面白そうである。
ただ、悲しいかな私はその時、「もうこれ以上中国人の名前を覚えるのは無理だ…」と思ってしまったのである。戦う前からのギブアップ。孫氏兵法の面目躍如である。
というのも、三国志だけでも主要登場人物が500人は軽く超えており、加えて水滸伝の梁山泊には108人のあだ名付き英雄達が登場するのだ。
「おう、白面郎君」「なんだ神箭」
みたいな会話をフツーに繰り出すので、誰を指したあだ名か分からず、そのフレンドリーさにしてやられることも多い。
もはや何を忘れているかを忘れ、何が正しいかも怪しい。ストップ四大奇書詐欺被害の立派な対象と言っていい。
これからキングダムを迎えるためには、人名データ容量を削除しなければならない。「えーと、竹林の七賢人は消そうかな〜?」なんて悠長に選択する気力もなく、私はオススメの申し出を丁重に断った。
それに、舞台となる時代も水滸伝から一気に1000年も遡ることになるため、TOD2のタイムリープにすら、ついて行くので必死だった私に、この時間旅行は耐えられないだろう。
とはいえ、どれくらいの長さにまとまっているのか気になり、ネットで調べてみると、30巻を優に越しているではないか。(当記事編集時、単行本49巻既刊)
「いや、めちゃめちゃ勝負かけてオススメしてきたな!」と、思わずにはいられない。
この気持ち…なんというか、プロ野球が好きな人にいきなり「ドカベンプロ野球編」を薦める感じとでも言うのだろうか…?巻数にボリュームがありすぎるというか…。
今回の場合はもっとこう、「STOP劉備くん!!」くらいのボリュームから段階を踏んでほしかった。ミスフルで合宿の際に猿野が、バッグ一杯にこち亀ぶち込んでくるボケじゃないんだから…。
言いたいことまとめ
作品はおそらく面白いかもしれないが、まずは軽めの作品からおすすめしてほしい。それと、薦めてくれた人はいずれもそんなに仲良くなかったので、長編漫画をお勧めする際には信頼関係の構築もできればお願いしたい。
あとは、相手が歴史物好きで、漫画のタイトルも既知なのに手を出していない場合は、地雷を疑ってほしいなぁ、と思った次第である。
以上で、不満解消の手続きは完了した。
世の中、こんなにめんどくさい人ばかりではないので、皆々様には好きなものは誇りつつ適度に布教活動を行っていただきたい。
ただ、私が態度を改めるかというとそんなこともなく、「一を以て之を貫く」という、孔子の格言ロードを実力行使で進んでいく所存です。
【生活】ぼんやりしていたら1年経ってました
気晴らしにブログを始めて、1年の歳月が流れたらしい。
はてな運営からのメールで、「もうそれほど経ったのか」と、一瞬過ぎ去った年月に思いを巡らせてしまった。
改めてこの1年で作成した記事を見返してみると、情報があっちいったりこっちいったりしていて、大変にせわしない。
全くもって多動。移住に次ぐ移住。後藤修もびっくりである。
ただ、そういった「情報のごった煮」的な創作作品が好きだったりするので、その影響が大いに出ていると思うし、なにしろちょっと居心地(?)が良い。
さすがに、ジャンクフードと修飾されるのはちょっと気が引けるので、明るい味蕾に修飾希望だわって感じで、手前味噌させていただいた。以上、振り返り終わり。
そんなこんなで、今回は近況を軽く記していこうと思う。
また、ここから1年を始めていこう。
§
最近、ちょっと気分が落ち込むことがあった。
そういう時に限って、何か気晴らしをやろうとする気持ちも減退してしまう。
せめて、図書館へ行き本くらいは読もうかなと思ったが、あいにくお目当ての本は予約しなければならず、すぐには読めない。
ふと、スマホのアプリ・青空文庫を思い出す。読みかけのタイトルがいくつも眠っていた。すかさず起動。
そこでチョイスしたのは、「藪の中」と「蟹工船」。案の定、気分が明るくなるわけはなく、負の連鎖に打ちひしがれる。
その後、テレビで突発的に「戦場に架ける橋」へ遭遇した私は、結末知ってるのに最後まで見てしまい、無事気分を奈落へ突き落したのでした。マッドネス・・・・。
§§*1
そんな私を癒したのは、平昌五輪でのロコ・ソラーレ北見の大健闘であった。
国の威信をかけて展開される頭脳戦に、思わず息を飲んで見守っていたが、彼ら・彼女らにもう癒されすぎて、確か3位決定戦のもぐもぐタイム中に、小野寺コーチが空気椅子してる映像を見ただけでも私の心は満たされた。
ついでに言うと、鈴木夕湖選手の公式プロフィールに「趣味・どうでもいい話をする」というのを発見し、私のナンバーワンストーンはあっさりとテイクアウトされてしまった(??)のであった。
五輪後は正直、「カー娘ロス」という単語が一瞬頭によぎったのだが、彼女らの戦いや挑戦はこれからも続くわけで、勝手にロス認定するのは失礼である。(ロス)暴動が起きかねない。
チームの残した銅メダルという結果に惜しみない賞賛を送るとともに、4年後も絶対にカーリングを見ようと心に誓ったのであった。
§§§*2
心が少し回復し、かつスポーツの気分であったので、この前時間があるときにオーストラリア代表メンバーの、現時点での所属チームでの個人成績を全部洗いだした。
とはいえこんなことをしても、普通に雑談のネタとして無暗に人へ話すと信用を失いかねないので、今から6月のW杯期間が待ち遠しい。この情報収集が、案外楽しいのだ。
調べていて、選手のネームバリューや成績が日本よりもだいぶ落ちている危機感はあったが、前回のW杯でのグッドルーザーっぷりからも、ナメてかかられると大物相手にも善戦できる可能性はある。
そだねー旋風が吹き荒れたように、豪だねー旋風をハウス(自宅)から期待しつつの執筆である。頑張ってほしい。
以上で、近況振り返りは終了である。
【生活】電車の止まる日は会社に行かない
その日、私の「病状」を悪化させたのは、通勤電車の運転見合わせ情報だった。
いつも通りの朝。ただ一つ違ったのは、私の頭の中を「迂回ルート」という言葉がぐるぐるとループしていたことだけだった。
いつも使う勤勉な通勤電車の、久々の運転休止。
そして、文字通り動脈を止められてもがき苦しむ男性会社員。
まさしく今、運休の煽りを喰った振り替え輸送の如く動きに動く脳内では、相変わらずに「迂回ルート」という単語が縦横無尽に漂っている。
どれもこれも冴えない表情で眼前に差し出されてくるルート候補を見るたびに、フリック入力が毒にも薬にもならないため息をスマホに生み出していく。とっくに本来家を出る時間は通り過ぎていた。
そして、私が見つけた最善の迂回ルートは、「会社を休む」という答えだった。この路線で行くしかない(会社へは行かないが)。
幸い、休んでも仕事は何とかなる見通しが立っていたので、丁重に保管されていた有休を一つ減らして、その日は会社を休むことにした。
私の知らない朝が、その日は始まろうとしていた。
普段の平日とは雰囲気が違う朝の空気は、まるで飲料水に無害な金属が溶けているかのような、かすかな重さと鼻腔をくすぐる香りを孕んでいた。
学生時代、風邪で学校を休んだ時のような、何とも言えない時間の重量を感じる。
そんな重さに押しつぶされないよう、とりあえずどこかへ出かけようとそそくさと身支度を整え家を出る。
まるでマリオカートのタイムアタックのようだ。半透明な自分の姿に合わさるように、通勤とまったく同じように家の前の道を歩いていく。
目指すは、イートインスペースのある洋菓子店。マッチ売りの労働従事者が、寒さに凍えながらごちそうを夢見ている。
お目当ての洋菓子店では、チョコレートケーキと珈琲を注文。ケーキには生クリーム増量をお願いした。
この店のチョコレートケーキは、ほんの少しチョコがザラっとしているのが特徴だ。
不快感があるわけではなく、むしろ酸味がパンチとなるベリー系のソースにうまく合わさっていてとても美味しい。
そして、生クリームをたっぷり付けていただく。
生クリームは、いつ食べても「許し」を感じずにはいられない。そこには、得も言われぬ贅沢感、ふんわりとした柔らかい食感、潔白を感じる色味、などが関わっていると思うのだが、ともかくもチョコとクリームとが合わさって最高の浄化を感じさせてくれる。まったくもって生クリームとは、最高の贖罪である。
珈琲を流し込み、最高の朝食を終えてお店を出る。
仕事をしていては絶対に気が付かない、街の様子であったり時間の流れ方を、余裕をもって感じられる瞬間がそこにはあった。
そんな私の脳内では、とっくに迂回ルートという単語は死語になり、今では何度も何度もtofubeats feat.オノマトペ大臣の「水星」が流れていた。
この水の星の小さな街の朝、そこに普段いるはずのない私はさながら宇宙人かもしれない。昼過ぎ新宿にでも行こうか、今回はそんな休日録。
【生活】#2017年ベスト男の子ランキング
今回も、前回記事に引き続きランキングを編纂する。前回と違うのは、「男の子」が対象という点である。
というわけで、またまたお世話になるのは偉大なる考案者様。
独断と偏見と、そして憧れと追憶とが混ざり合うごった煮ランキングで2017年に別れを告げようと思う。それでは、グッバイ開始。(人物名は敬称略)
第10位 松重豊
もちろん、年末の孤独のグルメも楽しかったが、2017年の松重豊はラジオの人でもあった。
一昨年秋に始まった「松重豊の深夜の音楽食堂」という初の冠ラジオ番組で、彼はメインパーソナリティーを務めている。そして、イメージが違うと言えば失礼なんだけれど、彼は意外にも若者向けの音楽もガンガンに吸収しており、逆に若輩の私がnulbarichだったりceroだったりnakamura emiだったりをこの番組で教えてもらっている。もはや、松重豊のセンスに私が磨かれているのだ。
そんな素敵な選曲群もランクインの要因の一つだが、もう1つを挙げるとすれば、雑談のどこか慣れない感じが凄くキュンとくる点も魅力なのである。
訥々と彼の口から語られる他愛のない、愛すべき雑談の数々(世田谷街道沿いに美味しい豚まんの店を見つけました とか)が、松重豊の人としての魅力を存分に引き立てている。そして、雑談によって少しずつ彼の昔話や考え方に触れていく実感が、番組リスナーをつかんで離さない。
また、松重豊のお仕事情報も絶えず告知されるため、松重豊好き好きオートメーションが、まさにこの番組にて確立したように思えてならない。ぜひ多くの人に、この感覚をを味わっていただければ幸いである。
第9位 渡部又兵衛
社会派コント集団・ザ・ニュースペーパーの創立メンバーである。社会ネタたっぷりだった2017年においては、籠池理事長の切れ味ある物真似を披露し存在感を放った。
見に行く機会がたまたまあったザ・ニュースペーパーの公演で、上記の通り理事長の物真似を担当していたのがこの方。登場時の勢いといいクオリティといい、笑っていないお客は一人もいなかったのではなかろうか。
そんなこんなで私も笑いに笑って、うっとりとしながらのエンディング。
彼の姿が目に入ったが、なんと同僚の竹内氏に肩を借りつつの登壇であった。演技中には一切年齢を感じさせない立ち振る舞いに、遅ればせながらその時気が付き、心から彼の持つ「役者魂」に感激したのであった。格好良かった。
第8位 野田クリスタル
マヂカルラブリーのボケ担当。昨年は念願のM-1本選出場を果たした。
もちろん、彼は言うまでもなくイケメンであるので、もちろんその点も魅力の一つではある。だが、私が今回選出した一番の理由は「上沼恵美子に言い返したから」である。
これはあくまで推測に過ぎないが、彼はあんまし平場で自分から前に出るタイプではないと思う。そんな彼が、地上波の舞台で、しかも審査員の一人・上沼恵美子に向かって「本気で挑んでるから」と言い返した。このシーンで、もう野田クリスタルへの好感度は爆上がりであった。2017年、私なりのビットコインである。
そして、この叫びは他の芸人の代弁でもあったように思えてならない。
というのも、予選までの審査の内容はいわばブラックボックスであり、笑いを取りながらも落ちていくコンビは毎年少なからず(観る人にはよるだろうが)いるのだ。
そんな芸人たちの思いも乗っているかのような、そして今までの彼ら自身がその中の一組であったことを断ち切るかのような「本気で挑んでるから」という叫び。
審査がどうこうではなくて、彼のこの一言が聴けたからこそ、今回のM-1は見てよかったなと思えた。昨年は緊張も見られたので、今年も本選の舞台で、マヂカルラブリーらしさ全開の漫才を心行くまで楽しみたいものである。
第7位 トバルカイン・アルハンブラ(CV.大塚芳忠)
「HELLSING」より。通称・伊達男。紳士然とした振る舞いと、大塚芳忠ヴォイスとのバランスが絶妙なキャラクターで、思い出したとき無性にバトルシーンを見たくなる。
惜しむらくは、序盤のかませ犬ポジションに過ぎないという点。カード投げキャラなので仕方ない気もするが・・・・。
昨年は若干フラリッシュにも興味を持ったので、それを踏まえてのランクイン。もちろんバトルシーンでは、フラリッシュを軽く超越したプレーイングで見る者を魅了する。
第6位 谷口彰悟
川崎フロンターレ悲願のJ1制覇の立役者の一人。とっても男前である。
大舞台にも動じないイメージが(勝手に)あるので、将来の日本代表も狙える才能なのではなかろうか。名前を覚えておいて損はないプレーヤーの一人。
Jリーガーでピンとくる選手はなかなかいないのだが、その中でも目立って私が気になった選手だったので、これからの活躍・成長に期待。
第5位 乙坂智
横浜高校野球部時代はセカンドでキャプテン。三浦大輔を継いで「ミスターベイスターズ」と呼ばれる資格十分の、期待の若手野手だ。
高校時代から注目していたのだが、プロではもう一つ打撃でアピールできていない印象で、「打てればレギュラーなのになぁ・・・・」ともどかしく感じていた。
それが、昨年のCSという大舞台での3ランホームラン。しかも、高校時代にも土を踏んだことのある甲子園の舞台で。これで一気にポイントが高まった。超シビれた。
しかもその後、チームは日本シリーズへと進み、福岡での初戦ではなんと現地で彼の姿を見ることが出来た。
残念ながらシリーズでは打撃が振るわず(足はめちゃくちゃ速かった)、ほろ苦いシリーズデビューと相成ったのだが、この経験はチームのみならず彼にも良い影響与えたに違いない。
メンタル面や礼儀、リーダーシップなど人間的には大変完成されていると思うので、ぜひとも今後長く横浜の地に君臨し続けてほしい。そんな好青年が彼である。
第4位 2007年のダリン・アースタッド(の選手能力)
ミートF パワーE 走力C 肩力A 守力B 弾道2 クラッチヒット4 ヘッドスライディング 粘り打ち 流し打ち 慎重打法 (実況パワフルメジャーリーグ2の能力値より。また、能力値などのデータは(株)コナミデジタルエンタテイメントに帰属します)
すごく良い。大変にツボを心得ていると言えよう。それくらい、この能力値にはあざとさをも感じてしまう。これほどに心憎い能力の選手はなかなかお目にかかれない。
それは、ディフェンス面での充実はもちろんのこと、決して高くはない打撃の数値にさえも、彼がかつてはシーズン240本の安打を打った巧打者であることを物語る特殊能力が付くことで、美しさを覚えてしまうからである。例えば近年のイチローなんかも、能力値的にはこのようなところに落ち着くのではないだろうか。
もちろん、彼は紛れもない名選手であるので、全盛期の能力値査定はとんでもなく強いであろう。だが、故障の影響で不振に終わった前年度成績を受けてもなお、能力値にこれだけのプラス面が見られる選手というのは、確かな技術力、身体能力が備わっている証左であり、表面だけに無い強さというものを感じることが出来る。
そして、このミートやパワーからは、彼の再起への強い思いなども感じられてしまって、なんだか感傷的にもなる。
彼は、この2年後に現役引退してしまうのだが、名選手が確かに存在したという証に触れることが出来て私は幸せである。
第3位 レヴ・アンドロポフ(演-ピーター・ストーメア)
アルマゲドンに出てきたロシア人宇宙飛行士。
映画の終盤で機械トラブルの際、「ロシアではこうやるんだ」と言いながらスパナでトントコぶっ叩き、見事に修理するという荒技をやってのけた。西側の資本主義ならぬご都合主義を支えた極東の雄である。
この前にも、断崖絶壁から虚空へ飛び出した車の車外で修理かなんかをやってのけており、ブルース・ウィルスの次にこの映画で活躍したと断言できる。
こういう、一見テキトーだけれどしっかり結果を残せる男というのは実に格好良いし、なかなか真似できるものではない。
恥ずかしながらアルマゲドン未視聴だったのだが、清々しいまでのご都合主義をしっかりと支えたレヴの存在が、昨年強く私の印象に残ったのである・・・・。(実は一昨年だったような気もするが、そこはドンワナクローズマイアイである(?))
第2位 アレックス・ターナー
アークティックモンキーズのボーカル。私が存在を知ったのはここ1,2年とかなり新参者だが、昨年めちゃめちゃ楽曲を聴いたし、カラオケで歌ったし、ライブ映像も結構リピートした。
デビュー当初は、どこか可愛い感じの雰囲気だったのが、気が付いたら大変に垢抜けており、ジョジョ4部の康一くんを彷彿とさせる成長を感じさせる。男女問わず惚れること請け合いだ。(康一くんの見た目は逆行していくけど)
上記の動画でのライブ映像が、これまためちゃめちゃ格好良い。こういうのを見るたびに、多感な高校時代あたりにもっと音楽に触れたかったと思ってしまう。
こちらは2014年のライブ版。漂う雰囲気がアダルトなものになっている気が。
楽曲の雰囲気も、落ち着いたUKロックといった感じに様変わりしており、アーティストとしての確かな歩みを感じられる。次回の来日を心待ちにしているし、できれば会場での合唱に参加したいものである。
第1位 Nurset Gokce(セクシー塩振り男)
通称・セクシー塩振り男。日本のメディアにも紹介され、一躍国内でも有名に。
日本以外の海外の方にも親しまれているらしく、アメリカかなんかに彼が行った際、通行人がセクシーにエア塩振りをして彼を出迎えていたのが印象的である。
Twitterでも話題になり、色々調べるうちに本人のアカウントを発見。
最初は、いちいち大げさな調理風景に笑ってしまったのだが、見るたびにそれが格好良さへと昇華していった。なんというか、長嶋茂雄の守備時の動きに通じる格好良さがあるのかもしれない。
それと、彼の上げる動画を見ていると、とても人生が楽しそうに見えてくるのだ。
人生を謳歌しているうちにたどり着いた調理パフォーマンスに、しがない会社員の私は大変に心を奪われてしまったのであった。しおらしくなっちゃうね。
というわけで、男女ともに私の好き勝手ランキングは終了である。
思い返せば、2017年はいろいろなことがあったが、今年も変わらずにアンテナを光らせ感性を磨いて、また来年度に振り替えられればなと思うにも至った。
最後に、そんな素敵な機会を与えてくれたランキング考案者様に、再度感謝を申し上げたい。また、次回のランキングにも参加させていただければ幸甚の極みである。
※追記
深夜の音楽食堂についての記述、何かおかしいと思ったら始まりは一昨年だった…。
ということで、恥ずかしながらの修正。