人類は海から来たという。そして、この男も海から来た。
その男の名は、チャン・ドンゴン。
他人の肌が好きだということだけを、わざわざ海を渡って伝えに来る律儀な男である。
ちなみに、私は日常でよく「死ぬほど」などとのたまい話を盛る関西人スタイルの話者なのであるが、たぶんチャン・ドンゴンのこのCMに死ぬほど影響を受けているのは間違いない。
さて、そんなチャン・ドンゴンであるが、私はある日ふと気が付いた。
「チャン・ドンゴンの対になる存在って、『101回目のプロポーズ』の武田鉄矢じゃね??????」と。
ドラマ『101回目のプロポーズ』内の話である。好きな人を失うのが怖いと浅野温子演じる矢吹薫が思いを吐露すると、武田鉄矢演じる星野達郎は路上に飛び出しトラックの前に立つ。トラックは達郎の前で止まり、彼はこう叫ぶのだった。
「僕は死にません……!僕は死にません!!!あなたが好きだから!!!!僕は死にません!!!!!!」
つまり、彼の主張は「あなたが好きなので死なない」ということである。
もうおわかりであろう。完全にチャン・ドンゴンの逆である。
もう一度、チャン・ドンゴンの台詞を思い出してほしい。
「あなたが好きです……あなたの肌が大好きです……いつまでも変わらないで……死ぬほどぉ……好きだからぁ……!!」
つまり、チャン・ドンゴンの主張は「あなたが好きなので死にそう」となる。完全に二項対立、二律背反の関係性であるのは明らかだ。
ちなみに、星野達郎は不死を何度かアピールした後にこうも言っている。
「僕が……幸せにしますからぁ……!!!!」
これは、現状を私が変えて幸せになるという意味であると思うが、これもチャン・ドンゴンと逆の関係性である。
なぜなら、チャン・ドンゴンは「いつまでも変わらないで」と相手の不変性を願っている。相手を変えることで幸せになろうとする星野達郎と、変わらないことが私の幸せなんだというチャン・ドンゴン。
この二物衝撃は、相手を想う人間の情熱を引き立たせているように思える。
よく、「好きなものは好きなうちに推せ」というような言葉をSNSで見る。それは、例えば好きなアイドルはいつか引退するかもしれないし、自分の好きな気持ちも冷めてしまうかもしれないからだ。
チャン マスト ドンゴーン
人生は一度きりなのだから、あなたも死ぬほど、そして死なない程度に何かを好きになってみて、その気持ちを大事にしてほしい。
人類は海から来た。そして私たちの感情はいつでも水物であり、常に海のような深さを湛えている。