自己表現ぶろぐ

会社では冴えない社会人が、ネット弁慶になるためのブログ。好きなものや興味のあるものの感想を、ちまちま書きます。

【映画】ブラックレインと映える月

先日の深夜、映画「ブラックレイン」がBSプレミアムでやるということで、迷わず録画をした。

松田優作の遺作として知られる作品で前から気になっていたが、加えて英語の台詞を頑張る高倉健が見られるということで、「今日こそは絶対見るぞ!」と、ワクワクが止まらなかった。

 

とはいえ、内容がヤクザものということで、劇中にハードな戦闘シーンが出ることは容易に予想できた。

ということで、録画が溜まっていた「月がきれい」を一気に11話まで見て、陰と陽とのバランスを取ってから視聴することに。誰も死なないし。

気が付いたら、茜ちゃんと小太郎くんがフツーにチューするようになってて、なぜか私の今年の夏が終わったような気がした。なんでだよ。

12話目はまだ見ていないが、全体的に初々しい恋路だけでなく、家族の暖かさ(主に安曇家の)も楽しめることの出来る、良い作品だったと思う。SNSの描写も細かく、時代に即していた印象。

 

とかなんとか思いつつ、やっと本題の「ブラックレイン」の内容に触れていく。

実際に見てみると、ツッコミどころが1億個あったと思う(※個人差あり)ので、最初に全体的な(考察とまでは昇華しきれない)感想を述べ、その後に細かく気になったところをちょいちょい好き放題言っていきます。

 

リドリー・スコットの日本観

「ブラックレイン」では、ニューヨーク市警のニックとチャーリーが日本の文化に翻弄される様が描かれている。

そしてそれは、もしかしたら当時の大半のアメリカ人が日本に抱いていたイメージを、リドリー・スコットが彼なりに解釈し、映像に投影したものなのではないだろうか。

そこで、そのような日本観を表すために、松本刑事役の高倉健、やくざの佐藤役の松田優作の両名が対称的なキャラクターを与えられていたように思う。

 

・松本刑事→仕事一徹の真面目人間だが、頭が固めで控え目である。今作では通訳をこなすため、多弁。少々流行に疎い面がある。

・佐藤→日本特有のやくざの世界に生きているため、謎のベールに包まれている。英語でのコミュニケーションはとらず、何を考えているか分からない面がある。

 

そこには、

「日本人は勤勉であるが融通が利きづらく、文化はアメリカよりも少し遅れている」というステレオタイプ的な面(松本のキャラクター)と、

「日本の文化は理解できない面も多く、言葉に出ないコミュニケーションなどはつかみどころがなく不気味である」というアメリカ人には不可解な異文化の面(佐藤のキャラクター)とが見て取れる。

また、ニックとチャーリーのキャラクターとしては、「先進的、柔軟、調子が良い」というような、今作の日本人にはあまり見られない面が与えられているように思える。

加えて、それらを目の当たりにするニューヨーク市警のニックとチャーリーが、ゴリゴリの都会暮らしであるという点は、日本とアメリカとの文化や考え方の違いを色濃くすることに一役買っている。

 

結論として、「日本は未だ少し文化的には遅れているかもしれないが、見どころが多い国であり国民だよね」というリドリー・スコットの好意的な日本観が、今作では発信されているということがいえるのではないだろうか。

 

松田優作高倉健との、興味深い比較

前述したように、対称的であるキャラクターを演じた高倉健松田優作であったが、演技の雰囲気も対称的であったように思える。

劇中、高倉健は英語の台詞が多く、松田優作は英語での台詞はほとんどなかった。

ただ、彼らの演技を見るに、高倉健はあまり表情を使わない武骨な刑事役という印象であったのに対し、松田優作はかなり表情を使って大きく演技をしていたように感じた。

台詞は多いが「静」のイメージの高倉健に対して、(英語での)台詞は少ないが「動」のイメージの松田優作という、面白いギャップが見て取れるのだ。

そのため、松本刑事は日本的なイメージを醸し出し、佐藤はどこか日本人離れしたイメージ、つまりアメリカ人の知らない日本を感じさせる怪しい雰囲気を醸し出しているのだと思う。

 

ここまで意図したキャスティングだったかは分からないが、どちらも二人の演技がハマったことで成立した役柄だったのではないのか、と感じるに至ったのである。

 

以下、気になったとこ抜粋

・あーん!チャーリーが死んだ!

まさか、最初の方のムレータの下りが死亡フラグになるとは思わず、お茶目で男前で、そして主人公の理解者でもある良心チャーリーが中盤に死んでしまい「やんぬるかな」って感じでした。

もうさ、ああいう良い奴が死ぬのは本当に悲しい。Zのアポリー中尉の時くらい悲しいよ。チャーリー役のアンディ・ガルシアが格好良く、とても好印象だったのに死んでしまったので、チャリ様よいしょ本書くしかないね。

 

ガッツ石松渾身の演技

劇中、佐藤の部下役でガッツ石松が出てくる。

今作では松田優作らの演技に注目が集まるが、ガッツさんの「俺は英語分かんねぇから日本語で話しやがれ」的な台詞のところに気持ちがこもってて好きでした。私も英語分からないので、100いいねくらいしたいシーン。

あと、最初観たとき内田裕也には気が付きませんでした。私が知っている最古の内田裕也は、ピエロに囲まれていた時の彼なので、それよか若々しくてびっくりしました。彼の英語こなれてる感、好きです。

 

・松本正隆、和製ジョンメイトリクス説

ニックに散々振り回されて刑事を停職になったにもかかわらず、どこからか銃を持参してドンパチ賑やかに大暴れしていた松本刑事が見られるシーンでは思わず、「軍を退いたのに危険が迫ったので、自前の銃器で無双乱舞するジョン・メイトリクス」を連想してしまいました。野生の証明といい、高倉健さんには人間武器庫の才能があるのだろうか・・・・?

 

 

などなど、挙げだしたらキリがないほどに内容の濃い映画であった。

名優たちが出ていることだし、「ブラックレイン」は機会があるならば一度見てみると良いかもしれない。また、ブレードランナーと合わせて観ると、なんとなく描かれ方がつながって面白いとも思う。

更にお好みで、美少女日常系アニメ等を前後に見ると、作品の色の違いに心地よく打ちのめされること請け合いです。やってみてね。