【短歌】『アライバック』(ルックバック×アライバコンビ)
アライバック/キクハラシヨウゴ
どこかでは一位指名に惑わされ自分が見えていなかったのだ
自分より上手い井端がいることに焦る ノックで忘れたかった
劣等を除され躍動を覚えるただひたすらに上手くなりたい
打つ方は井端に任せ走り出すこのフィールドを二人で制す
俺たちが荒木・井端だ脚光を二人の手から生み出していく
出るたびに賞に関わる活躍は僕らたしかに永遠だった
「もう少し野球をしたい」永遠はないのだろうな井端退団
新しい背には2の文字 中日の荒木と共に巨人の井端
井端より続けて届く一人ではなしえなかった2000の数字
この九首連作は、藤本タツキ先生原作の映画『ルックバック』を見て、どうしても創作エネルギーが湧いてできてしまった。
最初は、作中の京本ちゃんが好きすぎたので、その感情のままに作ろうとしたのだが、どうにもそれではわたしの創作らしさがないような気がした。
わたしの情熱を込められる創作はプロ野球短歌であり、プロ野球短歌(とSASUKE説)で森羅万象が表現できると思っているので、無謀にもルックバックプロ野球短歌を爆誕させるに至った。
藤野と京本のコンビを表現するに当たって、「荒木雅博が井端のうまさに嫉妬する」みたいなテキトーな走りだしで構想が生まれたが、意外にもドンドンと膨らんでいき、「井端が巨人に移籍してアライバコンビが解消するも、その先で荒木と同じ背番号を付けた」という事実を見たときに、もうそれはわたしのなかでは『ルックバック』だった。
ルックバック…アライバ…
アライバックってコト…!?!?!?!?!?
同じくルックバックを題材にした田中翠香先生の『京本に』という恐ろしく素晴らしい連作(https://note.com/landandfreedom7/n/n3d59f586a97e)を見たのも詠むきっかけとしては大きかった。
また、連作を編むにあたっては、鈴木忠平さんの以下の記事も大変参考になった。非常に丁寧で情熱を覚える秀逸な記事である。各位本当にありがとうございます。
https://bunshun.jp/articles/-/49437
創作は人知れず何かを背負う。
それは自分のものから周りのものまでさまざまだ。
でも、生み出されたさきに、わたしは何か光あるものを見てみたい。そんな気持ちになる作品が『ルックバック』であり、わたしが日頃詠んでいる「プロ野球短歌」なのかもしれない。
この作品に満足することなく、また明日からもプロ野球短歌を詠んでいきたい。
とにかく詠め!バカ!