【生活】タイムスリップ ラン ザ ロード
よくよく考えてみれば、中学を卒業して以来まともに運動をしていなかった。
日々の生活のなかで、例えば駅の階段を積極的に上り下りするとかはしていたけれど、本格的に走ることなどはない。社会人になったことをきっかけに運動に手を出す人もいれば、私はどちらかというとインドアな趣味をより深く楽しむほうだった。
しかし、そんな私を外に連れ出したきっかけがある。ホカオネオネとエンジニアードガーメンツのコラボシューズの発売だ。
https://www.hokaoneone.jp/unisex-road/hupana-2-eg/1097110/BTBK/
「antenna」だったかでファッションブランドのコラボ特集を何とはなしに見ている時に目が留まり、一切触れたことのなかったランニングシューズの世界の扉を開けたのだった。買ってしまえば走るしかないということで、素敵な青と黒とのグラデーションのシューズを迎えた私は、まさに今日この日に初めてのランニングを敢行した。
シューズの感触はばっちり。道を蹴る足も軽やかで、さすがは「time to fly」の謳い文句といった弾力性。
一歩一歩踏み出すごとにしっかりと大地を踏みしめてくれる安定感が嬉しい。
足を運ぶごとに迫りくる喜びに、一歩また一歩と足を出していく。走るって楽しいなぁ・・・・。
5分後、めちゃめちゃ息があがる。喘息特有の、水あめが喉奥に張り付くかのような炎症が私を襲う。目的地まではずーっと坂道である。
私はさながらシルポート並みに逆噴射をしながら、坂道をズルズル登っていく。くしくも、周囲には幼いころに遊びまわった景色が走馬灯のように広がっている。死も近い。
私は走れば走るほどに苦しくなっていき、変わらない風景は依然として思い出を映し続ける。走れば走るほど、「今」が感じられるその瞬間に、私はなんとも理不尽な時間の流れを確かに見つけていた。
その時、その地域で一番ぜえぜえしていたであろう私は、スピードをウォーキング程度に緩めてなんとか生き永らえた。というより、半死状態なのでリアルウォーキングデッド状態ではあったが。
歩いてみると、春の陽気が柔らかく感じられ、上下のスポーツウェアの締め付けが心地よく筋肉を支えていることに気が付く。北方三国志で張飛が、「死地に入ってからが本番」的なことを言っていたのを思い出した。あれを読んだのはいつだったか。
その後、走ったり歩いたりを繰り返しつつ、目的の森林公園で一休み。
一瞬、悠久の時を超えた何かが口から出そうになるも、物理の力でねじ伏せて事なきを得た。
行きの1.8キロに対し、帰りはペース配分を少し緩くしての2.5キロで走行。SASUKEにて「息を吸え」というアドバイスが飛んでたのを思い出し、呼吸を意識しての帰宅となったが、これが意外に足が動いた。少しは錆びついた身体も順応したのかと思うと感慨深い。
そんなこんなで、ランニング生活1日目は終了。1日おきで少しずつ走れるかを試していこうと思う。
もう3月も本当に終わりを迎え、いよいよ4月に突入だ。
寝ている間に人は夢の中で走り、あるいは動き回って、時間だけが身体を朝へと連れ去っていく。
今日も寝ている間に、私は4月1日へとタイムスリップしていることだろう。そんなベッドルームでの思いを乗せてこの曲でお別れ。春へと、ページをめくろう。