【映画】声に出して読みたい「木曜洋画劇場」の予告
山本・・NHKはスポーツをでき事として捉える傾向が強いように思います。それに対して民放の場合は、ある意味で商品として捉えている。
というのは、「実況席のサッカー論」(山本浩・倉敷保雄、出版芸術社、2007)からの一節である。NHKの実況が心なしか落ち着いて聞こえるのは、このような要素が関わっているのかと思うと腑に落ちる。スポンサーに応えるか否かというのは、番組制作に大変な影響を与えているということだ。
そして、この違いは映画放送の予告にも表れていると思う。
例えば、NHKの場合はあらすじを簡単に紹介し、テロップなどで過剰な演出をして盛り上げることはないイメージがある。実際に、現在BSで放送中の「プレミアムシネマ」では、番組プロデューサーが落ち着いた語り口で映画の魅力を伝えてくれている。
対して、さながらアメリカのお菓子のように、コテコテの色付けで分かりやすく映画を盛り上げてくれるのが「木曜洋画劇場」だった。
良くも悪くも、「商品」としての映画を宣伝するために繰り出される愉快なワードの数々は、実演販売員が演出する売り込み文句を彷彿とさせる。
今回は、そんな木曜洋画劇場の予告編が織りなす「立て板に水アクション」を紹介して、言いたいことを言おうと思う。
レッド・ウォーター サメ地獄/ナレーション・大塚芳忠
早速、タイトルがズルい。斎藤孝先生も興奮を隠しきれない日本語っぷり。「血」という単語を使わずに阿鼻叫喚の情景を表現する辺り、映画製作者側も相当な手練れだ。
そんな映画が、テレ東のぶっ飛びセンスと合わさってしまい、今回映画予告という形で世に送り出された。
さらっと挿入された嘘字幕芸も見逃せないが、プロレタリア・シャーキング・パニックという新ジャンルが爆誕していることを感じさせない勢いの良さと、大塚芳忠さんが最後何者かに襲われるというオチが、1分という枠を超越したボリュームを生み出している。全くもって、最高という一言が似合う一作だ。
コマンドー/ナレーション・内海賢二
言わずと知れた、人気B級映画。もう5回以上見た。
のっけから、シュワちゃんの肉体を分かりやすく賛美した筋肉賛歌が楽しめる逸品。予告自体にスピード感はないが、内海賢二さんの重厚な声質とも相まって、ずっしりとした重量感を覚えずにはいられない。
最後には、「戦うパパは、かっこいい」という 取って付けた 親子愛の部分にも触れており、健全なる肉体と親子の深い情愛、コマンドーの秘める人間賛歌の可能性にまで気が付かせてくれる秀作になっている。
プレジデントマン/ナレーション・郷里大輔
開幕「待ってました」で視聴者を強制的に待ち人にする(良い意味で)凶悪なシステムを完成させた良作。
チャック・ノリスの「サマラァイ」「ブシドー」が聴ける貴重なCMであるが、それゆえに内容が謎に包まれるという、心憎い演出も魅力だ。
ただ内容はともかく、チャック・ノリスの強さは十二分に伝わってきて、これだけでチャック・ノリス・ファクト三杯はイケる出来上がりだ。
ノックオフ/ナレーション・玄田哲章
テレ東スタッフはジャン=クロード・ヴァン・ダムという名前がよっぽど好きなんだろうなぁ、ということがこれでもかというくらいに響いてくる。
「全身の毛穴で受け止めろ」という、急な無茶ぶりもご愛敬。終始ハイテンションで駆け抜けた玄田さんにも拍手を送りたくなる。
コブラ/ナレーション・立木文彦
「男の子リトマス試験紙」がやりたかっただけだろ!という意欲作。木曜洋画の予告常連の立木さんが、今回もそつなく読み上げる。
爆発、銃撃と、アクション映画の基本的な盛り上げの中にさらっとハイセンスな言葉の地雷を隠しこむ姿勢がたまらない。踏み抜いた時の快感たるや、予告製作スタッフの熱量が全身を駆け抜けるような得も言われぬ感覚である。
如何だっただろうか。以上で、声出し終わりである。
気が付いてみたら、もれなく豪華声優陣が声を当てており、制作陣に改めて感謝を申し上げる次第である。
無骨なうるさ型オタクたちも、これならば絶賛間違いなしであり、ガルパン、艦これ、木曜洋画の時代が来るのは間違いない。
とりあえず、自宅で予告を文字に書き起こしつつ、実際に声に出してみるのも悪くないかと思うこの頃。Cubaseが活躍する日も近い。