自己表現ぶろぐ

会社では冴えない社会人が、ネット弁慶になるためのブログ。好きなものや興味のあるものの感想を、ちまちま書きます。

【生活】電車の止まる日は会社に行かない

その日、私の「病状」を悪化させたのは、通勤電車の運転見合わせ情報だった。

 

いつも通りの朝。ただ一つ違ったのは、私の頭の中を「迂回ルート」という言葉がぐるぐるとループしていたことだけだった。

いつも使う勤勉な通勤電車の、久々の運転休止。

そして、文字通り動脈を止められてもがき苦しむ男性会社員。

まさしく今、運休の煽りを喰った振り替え輸送の如く動きに動く脳内では、相変わらずに「迂回ルート」という単語が縦横無尽に漂っている。

どれもこれも冴えない表情で眼前に差し出されてくるルート候補を見るたびに、フリック入力が毒にも薬にもならないため息をスマホに生み出していく。とっくに本来家を出る時間は通り過ぎていた。

 

そして、私が見つけた最善の迂回ルートは、「会社を休む」という答えだった。この路線で行くしかない(会社へは行かないが)

幸い、休んでも仕事は何とかなる見通しが立っていたので、丁重に保管されていた有休を一つ減らして、その日は会社を休むことにした。

私の知らない朝が、その日は始まろうとしていた。

 

 

普段の平日とは雰囲気が違う朝の空気は、まるで飲料水に無害な金属が溶けているかのような、かすかな重さと鼻腔をくすぐる香りを孕んでいた。

学生時代、風邪で学校を休んだ時のような、何とも言えない時間の重量を感じる。

そんな重さに押しつぶされないよう、とりあえずどこかへ出かけようとそそくさと身支度を整え家を出る。

まるでマリオカートタイムアタックのようだ。半透明な自分の姿に合わさるように、通勤とまったく同じように家の前の道を歩いていく。

目指すは、イートインスペースのある洋菓子店。マッチ売りの労働従事者が、寒さに凍えながらごちそうを夢見ている。

 

お目当ての洋菓子店では、チョコレートケーキと珈琲を注文。ケーキには生クリーム増量をお願いした。

この店のチョコレートケーキは、ほんの少しチョコがザラっとしているのが特徴だ。

不快感があるわけではなく、むしろ酸味がパンチとなるベリー系のソースにうまく合わさっていてとても美味しい。

そして、生クリームをたっぷり付けていただく。

生クリームは、いつ食べても「許し」を感じずにはいられない。そこには、得も言われぬ贅沢感、ふんわりとした柔らかい食感、潔白を感じる色味、などが関わっていると思うのだが、ともかくもチョコとクリームとが合わさって最高の浄化を感じさせてくれる。まったくもって生クリームとは、最高の贖罪である。

 

珈琲を流し込み、最高の朝食を終えてお店を出る。

仕事をしていては絶対に気が付かない、街の様子であったり時間の流れ方を、余裕をもって感じられる瞬間がそこにはあった。

そんな私の脳内では、とっくに迂回ルートという単語は死語になり、今では何度も何度もtofubeats feat.オノマトペ大臣の「水星」が流れていた。

この水の星の小さな街の朝、そこに普段いるはずのない私はさながら宇宙人かもしれない。昼過ぎ新宿にでも行こうか、今回はそんな休日録。

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