【テレビ】絶賛しつくされたハッチポッチを、今更全力で称賛
「何でもありの楽しい駅」。
昔、日本にはそんな国営のユートピアがあった。
ご存じ、「ハッチポッチステーション」である。
ハッチポッチステーションは、子供の頃によく見ていた。
思い返せば、番組内容を理解していたとは思えない。けれど、番組唯一の人間・グッチ裕三を中心に、人形のジャーニーやダイヤさん達がわちゃわちゃしているのがとても楽しかった。
各回、一応ストーリーはあったと思うけれども、様々なコーナーを中心に番組が進んでいったイメージが強い。そして、ハッチポッチが人々に絶賛された強いファクターとして、コーナーの存在は無視できない。
もちろん、ハッチポッチ視聴者の皆様におかれましては、毎回楽器破壊オチを披露する「ドン高田のドンバルーム」がお好きだとか、大西ライオンと基本システムが一緒の「スマイリー高田のリズムでGO!」は忘れられないだとか、十人十色の想い出がお有りだろうが、今回は「WHAT’S ENTERTAINMENT?」の話をさせてほしい。
ハッチポッチが高評価を得たのは、大人向けパロディが視聴者にメチャメチャハマったからだと言えるだろう。
それが各コーナーに表れていたのだが、特に「WHAT’S ENTERTAINMENT?」はパロディの楽園とも言えるコーナーで、とんでもない破壊力だった。
NHKの奇才達とモノマネ四天王の一人であるグッチ裕三がタッグを組み、
「子供向け番組だから、童謡を流してるけどそれが何か?」と言わんばかりに、童謡の名を騙った今夜はビート・イットや宇宙のファンタジーがガンガンに流れてくる。
あと、グッチさんが芸達者なおかげで、歌がちゃんと様になっている。彼の十八番のモノマネである「三大テノールのモノマネ」で「ぞうさん」歌いだしたら笑うに決まってんじゃんか。
このパターンは、「生き物の生態や特徴が子供に分かればよいだろう」というスタンスを採りつつ「マッコウクジラはせんすいキング」という曲で、YesとVan HalenとEuropeとJourneyをごちゃ混ぜにしてしまったむしまるQと同じである。けど、ちゃんとマッコウクジラの生態が伝わってくるのが凄い。
「童謡」を盾に、趣味丸出しの選曲や演出を高いクオリティでやってのけたハッチポッチステーションは称賛されるべきだし、人気が出て当然だ。最高である。
また、押さえられているパロディ元のアーティストや曲が一流揃いなのは、荒木飛呂彦先生のチョイスに通ずるものがあるように思える。いわば、洋楽入門番組でもあったのだ。それが親子で楽しめる点で、かなり評価が高くなるとも思える。後世に遺したい。
とにかく、ぜひぜひ一度ご覧いただきたい。特に「犬のおまわりさん」はNHKとグッチさんの本気が伺える意欲作。
「あのこはたあれ」のはずなのに、のっけから攻めすぎていて笑う。エリックかけブトンというネーミングセンスに脱帽。しかし格好良い。
グッチさんのファルセットが凄すぎて、内容はどうでもよくなってしまう。ぶっ飛んだ演出再現には執念すら感じてしまう良作。
http://www.tokyo-gucci.com 母さんの歌 with earth wind and fire
他に数十曲あると思うけれど、例外なくどれも観ていて楽しい。あの頃に思いを馳せたくなった時には、めったに電車が来ない駅でゆっくりしてみては。